貧乏でインドアなお気楽ライフ

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有栖川有栖「闇の喇叭」

あらすじ

召和20年、大東亜戦争終結し日本は敗戦。召和22年には北海道がソ連の意向を受け日本から独立。

そして時は流れ平世21年の日本では私的探偵行為を禁止する法律が成立する。

女子高生の主人公・空閑純(そらしずじゅん)は、探偵の両親に育てられるもある日母親が事件の調査中に行方不明に。

父の誠と二人で母の故郷に移住し連絡を待つ日々。

そんな中、地元では男の全裸死体が発見され、中央警察から警視である明神が派遣されてくる。

空閑父娘も密かに事件の調査を始めたのだが・・・

感想(ネタバレ含みます)

殺人事件の解決よりも、純たちを取り巻く時代や環境の方が気になっちゃいました。それはフィクションでありながら少しの真実が織り交ぜられているから。そしてそれがこの小説の魅力でもあるんだよね。

序章であるはずの「分断」がキャンバスを塗りつぶしていて、その上に純たちの物語が重ねられていく。

読み進めることは簡単だけれど、ふと考えてしまうこともある。

見慣れない人物を見ると北のスパイではないかと吹聴する酒店の主人・伊敷。反米感情を隠そうともしない教師の加治木。探偵は悪だとして目の敵にする警察。

みんな自分こそが正義だと思ってるんだよね。

取り締まりを受ける探偵からすると、警察では救えなかった人を救っているわけでこちらも正義。

反米感情からくる外来語を極力排除というのはわからなくもないけれど、地元で使うなまりでさえ矯正され標準語が推奨されるという世界。

そして最初に発見された全裸の男性遺体。こんな時代でなければ彼だって自分らしく生きて殺されることもなかったはず。

一方、空閑純(ソラ)の私生活はというと、両親が探偵であったということを隠し普通の高校生活を送る女子高生。

有吉景似子、小嶋由之という親友にも恵まれ静かに暮らしていた。はずだったのに、全裸の男性死体に続き、酒店の主人・伊敷も殺されたことで、景似子の母親が容疑者の一人となり、その疑いを晴らすため父親と二人で密かに調査を始めたことがきっかけで、父娘にとって思わぬ結末が待ち受けることになる。

殺人事件を解決するミステリーとしてよりも、空閑親子の絆や、純、景似子、由之、3人の友情、こういう時代に警察が果たす役割というか目的。そういった部分の方に引き込まれてしまった。

そして解決された殺人事件よりも、明かされなかった純の母親の行方、警察類似行為で逮捕された父・誠の今後、一人で町を出てしまった純のその後を知りたくなってしまう。

それから終章で「ソラへ」と題された由之の届かないソラへのメール。こんな友情があったらいいなぁと思わせてくれるものでした。